カタパルト式!スープレックス!!

クールなものだけメディア!(クラフトビール・スタートアップ・音楽・デザイン)

ボクら音楽メディア世代の懐かし話とこれからの話!

 音楽の楽しみ方ってすごく変わってきているんです。アルバムがあまり売れなくなって、ストリーミングになって。でも、アルバム単位で音楽を楽しむのって実はそれほど長い歴史がないんですよ。レコードが普及したのが1950年代で、アルバム単位で音楽を楽しむのってビートルズくらいから。

 レコードが一般に広まる前、作家はシートミュージック(楽譜)、演奏者はコンサートで生活の糧を得ていたわけです。ある意味で今はその時代に戻りつつある。だから、レコードやCDのようなパッケージで音楽を楽しんでいたボクらってすごく特殊な時期を生きてきたとも言えるんです、長い音楽の歴史からすれば。

 今回はLP5000枚、CD5000枚というコレクションを納める前提で家を建てちゃったマイクロソフト時代の友人であり音楽の先輩の藤澤さんと対談形式でこの素晴らしき特殊な時代を振り返ってみましたよ!ちなみにボクは5000枚ほどのCDコレクションをついこの前に全処分してしまいました!!!

 今回お邪魔したのは吉祥寺のクアトロラボ

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はじめて買ったアルバム

カタパルト式なかむら

 音楽に興味を持ったのっていつくらいからでした?

藤澤さん

 家では親がすごく勉強に熱心で、ずっとついて教えてくれてたんだ。だから小学生までは勉強漬け。趣味がなかったんだよね。そして中学に入った後いろいろな趣味を探した。洋楽を聴きはじめたのって中学生から。ラジオを買ってもらって、ラジオで音楽を聴いていた。そして出会ったのがボブ・ディランの『ハリケーン』。井上陽水もそれが収録されていたアルバム『欲望』がすごいって言ってて。

カタパルト式なかむら

『ハリケーン』はかっこいいですよね!ボクは小学六年生の時にお小遣いを貯めてYMOの『BGM』を買ったのが最初ですね。当時流行っていた寺尾聡の『Reflections』とどっち買うかすごく迷った。あれは人生の分岐点でしたね。寺尾聡のアルバムを買ってたら今の自分はない(笑)

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人生を変えた出来事

藤澤さん

 人生を変えたといえば、この『欲望』を買った時、レコードプレーヤー持ってなかったんだよね。ソノシート用のポータブルプレーヤーしかなかった。それで聞くんだけど、当然ラジオで聴いたみたいにカッコよくないんだよ。

 で、親に買ってほしいと頼んだんだ。

カタパルト式なかむら

 当時ってまだミニコンポとかなかったから高かったんじゃないですか?

藤澤さん

 テクニクスのセットで確か22万円くらい。うちも豊かな方じゃなかったからすごく高い買い物で、当然ながら父親は買ってくれなかった。でも、母親が買ってくれたんだ。父親にすごく怒られたらしいんだけど。すごく高い買い物だったと思うんだよ。それが自分の人生を変えてくれたと思うだよね。あれがなかったら全く違う人生になってた。

 母親が亡くなる前、すごく大病をして入院してたんだ。意識はもうなかったと思うだけど、「あの時のこと、ありがとう」って言い続けたよ。本当に感謝している。

カタパルト式なかむら

 子供が興味を持ったタイミングでの親の関わり方ってすごく大事ですよね。人生を変えるタイミングで。あと、友達も大事ですよね。

藤澤さん

 中学三年生くらいから同じ音楽の趣味の友達ができはじめたんだ。その頃だとオールマン・ブラザーズ・バンドとかドゥービー・ブラザーズとか。ワーナー・パイオニアの「ロック名盤復活シリーズ」の第一回、ザ・バンドのプロデューサーのジョン・サイモンとかロジャー・ティリソンとか買ったのもその頃だったかな。

カタパルト式なかむら

 エーーーー!それはすごくラッキーですよ。ボクなんて友達全然いなかったですもん。藤澤さんとジャンルは違えど「なんか変な音楽聴いてるやつ」みたいなポジションで友達全然いなかったです!

ブラック・ホーク、パイド・パイパー・ハウス、アミナダブ

藤澤さん

 幸いにしてそういう友達が周りにいて、競うようにディープな方向にどんどんいって。その頃から通っていたのが渋谷の百軒店にあったブラック・ホークという喫茶店。

渋谷百軒店ブラック・ホーク伝説 (CDジャーナルムック)

渋谷百軒店ブラック・ホーク伝説 (CDジャーナルムック)

 

カタパルト式なかむら

 ボクにとってそういう店はパイド・パイパー・ハウスですかね。

PIED PIPER DAYS パイドパイパー・デイズ 私的音楽回想録1972-1989

PIED PIPER DAYS パイドパイパー・デイズ 私的音楽回想録1972-1989

 

藤澤さん

 パイド・パイパー・ハウスには学校からの帰りによく通ったよ。渋谷は通学路だったし。他にその頃(1976年-1977年)良く通ったのは、渋谷のディスク・ユニオン、原宿のメロディハウス、吉祥寺のジョージア、吉祥寺の芽瑠璃堂、新宿の新宿レコード。廃盤セールには早朝一番で並んだなあ。

 ただ、78年頃から世の中的にはシンガーソングライターからAORに移行していった時期で、僕はAORを聴かなかったのでパイド・パイパー・ハウスに行く頻度はだんだん減っていったかなあ。ブラック・ホークではスワンプ系とかUKフォークとか流してたんだよね。ブラック・ホークのオススメみたいなのはすごく吸収していったね。

 今だから言えるけど、いいアルバムがかかるとラジカセを置いて録音させてもらってた(笑)。店の方も録音の邪魔にならないようにコーヒー豆をひかないでくれたり。

カタパルト式なかむら

 うわー!それボク小学生の頃やってましたよ。家でテレビの歌番組を録音するとき。久米宏と黒柳徹子の頃のザ・ベストテン。

 沢田研二やピンクレディーが大好きだったんですけど、テレビのスピーカーにぴったりラジカセつけて。あと、サイモン・アンド・ガーファンクルのライブがテレビでやってて、それもラジカセで録音しましたね。当時ラインから取るなんてテクニック知らないから!それをブラック・ホークでやるってのがすごいなあ。

 録音といえば貸レコード屋とかは行かなかったんですか?

藤澤さん

 貸レコード屋はたくさん行ったよ。特にパンクからニューウェーブへの移行期に、ニューウェーブは貸レコード屋のお世話になったなあ。自分自身はどんどんルーツミュージックの方向へいってたんだけど、やっぱり新しい動きにも興味はあったんですよ。まず聞いてみようみたいな。これもお勉強的だよね(笑)

 スリッツとかジョイ・ディビジョンは悪くなかったかな。

 あと80年代くらいからワールドミュージックも聴くようになったんだよ。

カタパルト式なかむら

 いわゆるワールドミュージックが盛り上がったのってもう少し後じゃなかったでしたっけ?ユッスー・ンドゥールとかサリフ・ケイタとか。その前だとフェラ・クティとかですか?

藤澤さん

 そうそうアフリカ系のワールドミュージックのブームはもうちょっと後だよね、Womadみたいな音楽フェスとか。その前に僕は高校卒業した80年頃から主にサルサ、サンバ、レゲエにはまったの。

 住んでいた高円寺に新星堂系のディスクインっていうレコード屋があって、サルサ、サンバ、レゲエなどはそこで随分と聴かせてもらった。行くときは3時間くらい居座った。色々なアルバムを聴かせてくれたんだよ。買うかどうかもわからないのにシールド切ってくれて。ファニアレーベルのアルバムを集めはじめたのはその頃かな。

 あと、それから後で、同じく高円寺にアミナダブという中古レコード屋で初めて今でいうコンゴのルンバ、当時はリンガラとか呼んでいた音楽を聴いて。オルケストル・ヴェヴェ、フランコとTPOKジャズ、ザイコ・ランガ・ランガ、ヴィヴァ・ラ・ムジカとか。それが衝撃の出会いだったな。

(高円寺というか中央線沿線の音楽シーンの話で盛り上がったけど省略!)

レコードからCDへ

カタパルト式なかむら

 あと、輸入盤屋は大きかったですよね。最初が道玄坂のタワーレコードだったかな。あそこには随分とお世話になりました。国内版だと2500円くらいなのが輸入盤だと1200円くらいでしたから。あれは大きかった。

藤澤さん

 タワーレコードはCDの初期、トールケースの頃に行ったかなあ。(注:CDの初期の頃はトールケースという縦長の紙ケースにCDのプラケースが入ってました)

 むしろタムボリンでよく買ってたかな。毎月5万円くらい!タムボリンってアルバムの通販なんだよ。いまではネットショップになっているけど、当時はカタログからハガキで注文したんだ。

カタパルト式なかむら

 藤澤さんってどれくらいにCDに移行しました?

藤澤さん

 かなり早い方だと思うよ。90年代にはすでにCDに切り替えてた。

カタパルト式なかむら

 ボクもかなり早かったんですよ。これからはデジタルだ!って。レコードを全部処分しちゃったんです。これは今となっては大後悔です。

藤澤さん

 試行錯誤を随分として、最終的にはあるところから古いのはアナログ、それより新しいものはCDにしたかな。その境目が1987年くらい。もちろん、処分した後に買い戻したのも随分とあったよ。

カタパルト式なかむら

 いまだからわかるけど、当時のCDってあまり音が良くなかったですよね。リマスター版とかが出て愕然とする。誰だよ、デジタルは音がいいとか言ってたやつ!

(この後マスターによる音の違いの話で盛り上がったけど長くなるので省略!)

ストリーミングとかこれからの音楽

カタパルト式なかむら

 ヘッドフォンで音楽を聴くようになって音の違いに気がつくみたいなのはありますよね。どのアーティストもつい最近までiPodに最適化したマスタリングをしていたって話だし。

 ところで藤澤さんはストリーミングで音楽とか聴きます?

藤澤さん

 家族は聴いてるみたいだけど、自分はまだかな。思うにストリーミングとアルバムの音楽の聴き方って違うんだよ。オレの場合は自分でレコードを買うようになってからラジオを聴かなくなった。マニアックな音楽ってあまりラジオで流れないから。

 自分の音楽の聴き方は、その時の気持ちにあった、これを聞きたいという音楽を選択して、家でゆっくりと聴く。在宅での仕事中にもバックグラウンドとしてかけるし、外出中にも聴くけど、その場合も聞きたい音楽や買ったけどまだ聞いていない音楽を意識して選択して聴く、って感じ。だから、音楽の聴き方ってラジオ的じゃないんだよね。

カタパルト式なかむら

 ストリーミングの聴き方ってラジオ的ですものね。アルバム単位というよりはプレイリスト単位。プレイリストってカセットテープでミックステープを作る感じにも似てる。人気DJではなくても誰でもプレイリストを作れる。

藤澤さん

 CDが売れなくなって、アーティストの収入源もライブやストリーミングからの収入が増えてきた。

カタパルト式なかむら

 たぶん、アナログはなくならないと思うんですよ。アナログはまた売り上げが伸びてきたし。アナログを聴くこと自体が音楽体験ですよね。レコードの針を落とす、A面が終わってB面に変える。スプレーをかけてキレイに手入れをする。それを含めて体験ですよね。

藤澤さん

 そう。儀式だよね。作る側もそれを意識して作るからね。CDの場合って流して聴いちゃうと思うんだ。LPの場合は場合によっては聴きたい3曲目に針を下すとかもあるけど、CDで3曲目にいきなりスキップして聴くとかは、まずやらない。なぜかわからないけど。物理的メディアならではの音楽体験がアナログにはあるよね。

 あとCDになってからアルバムの収録が多すぎるというか、長すぎるよね。人間の集中力ってそれほど長く続かないと思うんだ。

カタパルト式なかむら

 レコード時代は46分のカセットテープで十分だったけど、CD時代になってから60分テープが必要になりましたもんね。

 まあ、いろんな意味でアナログは無くならないと思うんです。もう、レコード処分して本当に大後悔!CDは5000枚くらいあったの全部処分しちゃったんですけど、たぶんCDはなくなってくと思うんですよ。たぶん後悔しない!たぶんですが!

 映像でいえば4Kとかストリーミングの方が早かった。ネットフリックスとか。ブルーレイの4Kプレーヤーってまだそんなに普及してないですよね。高画質はストリーミングの方が対応が早かった。同じことが音楽にもいえて、ハイレゾとかストリーミングの方が早いと思いますよ。

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