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興味がない人は無理して読まなくていいんだぜ。

ビールの王様に80年代から続くクラフトビールの歴史とビールスタートアップについて教えてもらったよ!

 今回はアムステルダムのビール専門店デ・ビアコーニング(De Bierkoning) にオランダのビール事情を聞いてきましたよ!コーニングはオランダ語で「王様」という意味。ビールの王様ってことですね!

 インタビューを受けてくれたのはオランダでも有数のビール愛好家としても知られるJan Lemmensさんです!80年代から脈々と進化し続けるオランダビールとオランダビールのスタートアップたち!その歴史をひもといてみましたよ!

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 −−デ・ビアコーニングはいつスタートしたんですか?

「1985年ですよ」

−−1985年ということは、ブロウワレイ・アイ(Brouwerij 't Ij)と同じ年ですか?

「そうだね。他にもディストリビューターのBier & Co.やビアカフェのBierproeflokaal In De Wildemanが同じ年だったと思うよ」

−−80年代半ばはアメリカでもクラフトビールが盛んになりはじめた時期です。オランダもその波がやってきたということですかね。

「この時期にたくさんのビール関連のスタートアップがオランダで生まれたのはいろんな理由があると思うんだ。今も同じなんだけど若い人たちはメインストリームじゃないオルタナティブを求めているんだよね。ハイネケンじゃない何かを。

 アメリカもそうだけど家でビールを作るのが法改正でできるようになったよね。最初はベルギーのビールとかをお手本にして自分で作るんだ。そしてうまくできるようになったらそれを仕事にしようと考える」

−−その当時はどんな感じだったんですか?

「今みたいにインターネットもないからね。とにかく情報がないんだ。情報がない中でいろいろと手探りをしていかないといけない。

 法律の整備も今ほどされていなかったしね。

 あと、何と言っても原材料が今ほど豊富にないわけさ。今では原材料の流通網も整っていて、なんでも手に入るけど、その当時はなんでも手探りだからね。大変だよ。今でも生き残っているのはうちを含めてさっきの4社くらいかな。でも当時はもっとたくさん新しいビール関係の会社が出てきたんだ」

−−90年代にはヨペンやテセルといった商業的にも成功する会社も出てきました

「80年代に生まれたビールスタートアップの多くは商業的に成功せずに消えていったけど、ビール産業自体は地道に成長していったということだね。ヨペン(Jopen)やテセル(Texel)は商業的にうまくやるにはどうしたらいいのかを学んで成功したと思うよ。

 80年代がビール1.0だとしたら90年代はビール1.1って感じだね!(笑)」

−−ここ最近オランダのクラフトビールの輸出も好調で、醸造所も多くできてきています

「これはオランダに限らず世界的なトレンドだね。アメリカからはじまって世界各国で新しいビールが生まれている。いまは国によって大きな差はないと思うよ。イギリスのビールだったらホップの香り(Hoppiness)、アメリカのビールなら苦味(Bitterness)とか若干はあるかもしれないけど、それぞれの醸造所がそれぞれユニークなビールを作っている。

 そういった意味でオランダもたくさんのユニークなビールを作るスタートアップが生まれているということさ。今がビール2.0だね!(笑)

 最近の流行としてはIPAや季節限定の材料を使ったセゾン(Saison)だね。あと、Berliner Weisseのようなサワービールとかね」

−−ビール2.0の特徴はなんでしょうか

「昔と違って今はたくさん情報がある。原材料も手に入りやすくなった。新しいことをやりやすくなったんだ。

 ビールって完成された飲み物ではない。伝統も大事なんだけど、まだまだやれることがたくさんある。ビールは伝統が作るものではなくて、人が作るものなんだ。そして人は常にイノベーションをしてくものなんだよ。ビール造りの全てのプロセスにおいてまだまだできることがあるんだ。ホッピングもその一つだし、水の品質管理もそうだよね。

 ただ、伝統も大事だよ。伝統に縛られることはよくないけど、そこから学ぶこともあるんだ。技術の進化のおかげで品質は安定してビール作りに失敗してダメになるということは減った。ただ、ビールのバリエーションはそのために減ってしまったよね。新しいものを作るために失われた伝統を見つめ直すことも必要なのさ。それがまさに今みんながやっていることだよね」

−−最後にオススメのビールを三つあげてください。

「むずかしいね!

 まず、Brouwerij de MolenのHemel & Aarde(写真真ん中)。これはスタウトビールだね。次はOersoepのSergeant Pepper(写真右端)。実際にペッパーが入っているわけでなくて、イーストからペッパーの風味が生まれるんだ。スパイシーなビールだよ。三つ目がOedipusのSalty Dick(写真左端)かな。これはさっき説明したサワービール。名前の通り塩が少し入ってるんだ」

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デ・ビアコーニングの地図

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