カタパルトスープレックス

興味がない人は無理して読まなくていいんだぜ。

2020年映画ベスト|ベスト・オブ・2020

2019年に観た映画は65本でしたが、2020年に観た映画は547本でした。コロナ禍で在宅勤務が基本となり、通勤がなくなった影響が大きいです。通勤は往復で三時間かかるので、この時間の使い方が変わりました。通勤の時はオーディオブックで本を読んで(聞いて)…

映画評|ガイ・リッチー監督最新作は原点回帰の良作だった|"The Gentlemen" by Guy Ritchie

日本未公開作品のレビューを書くリスクとは何か?それは、レビューを書く前に日本公開されてしまうことです。書籍の場合、そのリスクは大きくありません。書籍の翻訳って時間がかかりますから。しかし、映画の場合はレビューを書く前に日本公開されてしまう…

映画評|セリフと音の不在が不安を生む|"Bait" by Mark Jenkin

今年はコロナ禍で生活のリズムが変化したために読書が減り、映画鑑賞が増えました。さすがに今年も後半になり、書評があまりに少ないことに気づき、大急ぎでたくさんの本を読みました。おかげでだいぶ読書もキャッチアップできた感じです。そして、ふと気が…

書評|スタートアップを大企業からの攻撃から守るイノベーションの鎖|"The Innovation Stack" by Jim McKelvey

ペイメントのスタートアップとして大成功したSquareといえばジャック・ドーシーのイメージが強いと思います。ジャック・ドーシーはツイッターの共同創業者でもあり、知名度が高いので仕方のないことです。今回紹介するのはSquareのもう一人の共同創業者であ…

まとめ|2020年アメリカ合衆国選挙における投票法案のハイライト

2020年のアメリカ合衆国選挙(大統領選挙/上院選挙/下院選挙/州知事/各州の投票法案が同時に行われる)は見所がたくさんありました。今回はトランプ vs バイデンの大統領選挙がエンターテイメントとしても、とても面白かったので日本でも注目されました…

書評|ルービック・キューブ考案者が語る創造性とデザイン|"Cubed" by Ernő Rubik

ルービック・キューブの考案者エルノ・ルービックの初書籍が今回紹介する"Cubed"です。ルービック・キューブが世に出てから40年以上経過しています。これまでに自伝とか出ていそうなものですが、この本がエルノ・ルービックが初めて書くの書籍。自分とその発…

書評|(個人的に)ダメだった書籍を晒してみる

人間には好き嫌いがあって、ダメなのはダメ。本を読んでいて「これヤバいなあ」って思うことありません?日本語だと危険信号って言えばいいのかな。英語だとレッドフラグって言います。ボクにとってレッドフラグなのがいくつかあります。 脳科学をリファレン…

書評|世界の終わりの現在|"Notes from an Apocalypse" by Mark O'Connell

「世界の終わり」は魅力的なトピックで、遥か昔からずっと語られてきました。世界の終わりはもうすぐだ!と。マーク・オコネルも「世界の終わり」に取り憑かれた一人で、その研究成果をまとめたのが本書"Note from an Apocalypse"です。専門書と言うよりはエ…

書評|人間の「仕事」消滅後の世界|"A World Without Work" by Daniel Susskind

人工知能によって人は仕事が奪われる!この手の話はすでにクリシェですよね。今さら真面目に語ってどうするの?今回紹介する"A World Without Work"はまさに語り尽くされた感のあるこのネタを改めて大真面目に検証する本です。 本書を書いたダニエル・サスキ…

書評|壊れた科学に泣かないで|"Science Fictions" by Stuart Ritchie

科学は人類の進歩に欠かせない手段ですよね。生物的な進歩よりも技術的な進歩の方がずっと早く、そのスピードが人間と他の生物の大きな差となっています。一方で、科学の信用が揺らぐような事件も起きています。日本だとSTAP細胞の論文の問題が取り沙汰され…

書評|アナーキストから見た民主主義|"There Never Was a West" by David Graeber

デヴィッド・グレーバーが59歳の若さでお亡くなりになりました。最近だと『ブルシット・ジョブ――クソどうでもいい仕事の理論』が日本でも翻訳されて紹介されたばかりでした。本来でしたらこのブログでは日本未発表/未翻訳の作品しか取り上げないのですが、…

書評|文化人類学から見た通貨と負債の歴史は経済学とはだいぶ異なる|"Debt" by David Graeber

デヴィッド・グレーバーが59歳の若さでお亡くなりになりました。最近だと『ブルシット・ジョブ――クソどうでもいい仕事の理論』が日本でも翻訳されて紹介されたばかりでした。本来でしたらこのブログでは日本未発表/未翻訳の作品しか取り上げないのですが、…

書評|データサイエンス時代のソフィストたちに騙されない方法|"Calling Bullshit" by Carl Bergstrom and Jevin West

英語でブルシット(Bullshit)は「バカらしい戯言」です。ウソ(Lie)とも言い切れない。嘘の場合もあれば、本当の場合もある。ブルシットは多くの場合はハッタリだったり、ごまかしたり、騙そうとする意図があります。ブルシットだとわかれば、トランプのゲ…

書評|60年前のケンブリッジ・アナリティカはダメなスタートアップの典型だった?|"If Then" by Jill Lepore

フェイスブックなどから個人情報を集め、データ分析をして、投票行動に影響を与えるキャンペーンを行ったケンブリッジ・アナリティカは多くの人にとって民主主義への脅威に映りました。しかし、ケンブリッジ・アナリティカのような会社は最初ではありません…

書評|フィルターなしのインスタグラムの歴史|"No Filter" by Sarah Frier

インスタグラムがフェイスブックに買収されるまでの成功物語って有名ですよね。ボクも以前にまとめたことありますし。もちろん、成功には後日談がつきものです。インスタグラムの創業者二人はフェイスブック買収後もしばらく残りましたが、二人揃って2018年…

書評|ピケティの考える富の不平等と政治|"Capital and Ideology" by Thomas Piketty

今年に入って登場したトマ・ピケティの新著"Capital and Ideology"は前著『21世紀の資本』をさらに発展させ、経済不均衡と政治の関係を歴史的に紐解いています。ページ数も"Capital and Ideology"は1,150ページと相変わらずのレンガ本。『20世紀の資本』の69…

書評|社員の管理なしでイノベーションして成長するネットフリックスの秘密|"No Rules Rules" by Reed Hastings & Erin Meyer

*異例の速さで日本語翻訳が出たのでリンクを追加しました。 ネットフリックスは間違いなく最も成長している企業の一つです。1997年に創業し、その三年後の2000年にはレンタルビデオの巨人だったブロックバスターに身売りを提案するが断られます。しかし、ネ…

書評|テクノロジーが触れてはいけない領域はあるのか?|"Sex Robots and Vegan Meat" by Jenny Kleeman

「ソフトウェアが世界を飲み込む」と宣言したのはマーク・アンドリーセンでした。2011年のウォールストリート・ジャーナル寄稿記事でマーク・アンドリーセンが指摘してことはほぼ現実になりました。しかし、まだまだテクノロジーが触れていない領域がありま…

ジャン=クロード・カリエールについて

コロナ禍の間、通勤しなくなり、通勤時間の間にオーディオブックで「読書」する習慣がすっかりなくなってしまいました。移動時間がなくなり、読書時間が減りました。その代わり増えたのが映画を観る時間です。ちゃんと数えるのも面倒ですが、今年に入って既…

映画評|1980年代アッパークラスの1990年代からの眺望|"The Last Days of Disco" by Whit Stillman

1990年初頭から脚光を浴びたインディー映画監督といえばスパイク・リー、アキ・カウリスマキ、クエンティン・タランティーノを筆頭にケビン・スミスやハル・ハートリーなどたくさんいますね。それに比べてホィット・スティルマンは同じ時期に自主制作で脚光…

映画評|「ファックド・アップ(どうしようもない奴ら)」を描き続ける監督|"Beach Bum" by Harmony Korine

今回紹介する日本未公開作品はハーモニー・コリン監督最新作"Beach Bum"です。本作に限らず、ハーモニー・コリン監督作品は好き嫌いが分かれます。一作だけ観てもなかなか登場人物たちに共感できないかもしれません。それは登場人物が全て「ファックド・アッ…

映画評|俳優ニコラス・ケイジの本質とは何か?|"Color Out of Space" by Richard Stanley

ボクはニコラス・ケイジが大好きです。最初に意識したのがコーエン兄弟監督作品『赤ちゃん泥棒』(1987年)でした。その前にもフランシス・コッポラ監督『ランブルフィッシュ』やシェール主演の『月の輝く夜に』に出演しているので、ニコラス・ケイジが出演…

書評|アメリカのシャーロック・ホームズはリンカーン・ライムのルーツ|"American Sherlock" by Kate Winkler

ボクはシャーロキアンとまではいきませんが、シャーロック・ホームズが大好きです。「聖典」はすべて読んでいますし、映画もだいたい観ています。ロンドンにあるベーカー街221B(シャーロック・ホームズ博物館)にも行きました。シャーロック・ホームズは化…

映画評|『パラサイト』の元ネタも救ったマーティン・スコセッシの映画保存プロジェクト|The World Cinema Project

ボクは本を読むのが好きで、音楽を聴くのが好きで、映画を観るのが好きなインドア系の人間です。だから、このブログも本と音楽と映画が中心です。ブログで紹介するのは日本でまだ紹介されていない作品が中心ですが、日本の本も読みますし、邦画も観ます。 日…

書評|「頭で考えたらモノが動く」はすぐそこにある現実|"The NeuroGeneration" by Tan Le

映画『アベンジャーズ』でロバート・ダウニー・ジュニア扮するトニー・スタークが浮かんでいる画面を手でササっと操作したり、やはり映画『ドクター・ストレンジ』でベネディクト・カンバーバッチが光の魔法陣をバッと手から出して防御したりカッコいいです…

映画評|アメリカン・ニューシネマに中指を突きつけたパンクな映画|"Wanda" by Barbara Loden

1960年代中頃から1970年代後半は映画ではアメリカン・ニューシネマの時代です。音楽ではプログレッシブ・ロックの時代ですね。アメリカのテレビジョンやイギリスのセックス・ピストルズのようなパンク・ロックはその後の1970年代後半からとなります。今回紹…

書評|数学者のYouTuberによる楽しい数学|"Humble Pi" by Matt Parker

最近ではYouTuberの影響力が大きくなってきました。テレビではなくYouTubeのチャンネル、音楽だってYouTubeで聴く。YouTuberはエンターテイメントだけではなく、学術の世界にも広がっています。今回紹介する数学をエンターテイメントする"Humble Pi"の作者マ…

映画評|道なく、愛なく、犯罪のないボニー&クライド|"River of Grass" by Kelly Reichardt

有名監督の最初の作品って初期衝動が詰まっていて好きなものが多いです。スパイク・リー監督の『シーズ・ガッタ・ハヴ・イット』とかクエンティン・タランティーノ監督の『レザボア・ドッグス』とか。しかし、意外と初期作品ってメディアになってなかったり…

書評|ポール・クルーグマンから保守ゾンビへの宣戦布告|"Arguing with Zombies" by Paul Krugman

政治的な意味において保守(小さな政府)に対する考え方はリベラル(大きな政府)です。そして、経済的な意味においてリバタリアン(完全自由主義)に対する考え方がプログレッシブ(革新主義)です。政治的な考えは経済的な考えに結び付きます。逆に経済的…

映画評|サイケデリックでダウナーな暴力|"Bliss" by Joe Begos

ニコラス・ケイジ主演映画『マンディ― 地獄のロード・ウォーリアー』が大好きで、映画の中で主人公が着ていたロングTシャツ(虎の絵のやつ)をオフィシャルストアで買ったくらいです。クエンティン・タランティーノは50年代や60年代をモチーフにしたジャンル…