カタパルトスープレックス

興味がない人は無理して読まなくていいんだぜ。

起業

書評|スタートアップを大企業からの攻撃から守るイノベーションの鎖|"The Innovation Stack" by Jim McKelvey

ペイメントのスタートアップとして大成功したSquareといえばジャック・ドーシーのイメージが強いと思います。ジャック・ドーシーはツイッターの共同創業者でもあり、知名度が高いので仕方のないことです。今回紹介するのはSquareのもう一人の共同創業者であ…

書評|フィルターなしのインスタグラムの歴史|"No Filter" by Sarah Frier

インスタグラムがフェイスブックに買収されるまでの成功物語って有名ですよね。ボクも以前にまとめたことありますし。もちろん、成功には後日談がつきものです。インスタグラムの創業者二人はフェイスブック買収後もしばらく残りましたが、二人揃って2018年…

書評|ニューヨークとサンフランシスコの間の「不気味の谷」|"Uncanny Valley" by Anna Wiener

オンライン版の雑誌『ニューヨーカー』で記者をやっているアナ・ウェイナーの初著書である"Uncanny Valley"は日本語で「不気味の谷」です。不気味の谷は最近はロボットへの嫌悪感を表す心理現象です。ロボットっぽいロボットには特に嫌悪感は感じないのだけ…

書評|金融市場の謎をアルゴリズムで解いた男|"The Man Who Solved the Market" by Gregory Zuckerman

一般的なイメージとして金融や経済はお金を扱うのだからデータ中心で科学的なのではないかと思われがちです。しかし、一般的なイメージとは裏腹に、経済学は「科学」だと認識されていません。ノーベル経済学賞も通称であってノーベル賞ではありません。金融…

映画評|イーロン・マスクのプロトタイプとしてのジョン・デロリアン|Framing John DeLorean

デロリアンといえば映画『バック・トゥー・ザ・フューチャー』に登場するタイムマシンに改造されたスポーツカーですね。実際のモデル名はDMC-12です。作った会社はデロリアン・モーター・カンパニー(DeLorean Motor Company)で、その創業者がジョン・デロ…

書籍|炎上する若者と批判する大人、早咲きの棋士と遅咲きのハリポタ|"Late Bloomers" by Rich Karlgaard

2019年に9歳で最年少棋士となった仲邑菫さんなど若くして才能を開花する人たちがいます。一方で、インスタグラムやツイッターでのバイトテロなど浅はかな行為で炎上してしまう人たちもいます。最近だとレペゼン地球とジャスミンゆまのパワハラやらせによる炎…

いまさら聞けない世界をリードする中国eコマース事情:ライブコマース編(その4)

今回のライブコマースの特集では主にファッションを起点に紹介してきました。しかし、中国でストリーミング+eコマースの文脈で語られるのは主にゲームだったりします。そこで、最後にゲーム文脈でのライブストリーミングを紹介します。日本だとプレイステー…

いまさら聞けない世界をリードする中国eコマース事情:ライブコマース編(その3)

eコマースはスケールのビジネスなので寡占化しやすい業種ですが、生鮮、家電など独立しやすい分野もあります。アリババとJDが並存しているのもこの理由ですし、アマゾンがホールフーズを買収したのも同様です。個性が重要なファッションも独立して成立しやす…

いまさら聞けない世界をリードする中国eコマース事情:ライブコマース編(その2)

古今東西そうですが、ファッションのeコマースではインフルエンサーが重要な役割を果たします。KIMONOを商標登録しようとして物議を醸したキム・カーダシアンとか。タイでピンクが大流行して、オフィスの中でもピンクを身につけている人が多かった時期があり…

書評|日本のスタートアップが海外のVCから投資されない理由|"Secrets of Sand Hill Road" by Scott Kupor

業界にはそれを象徴する中心地があります。映画の象徴がハリウッドで、金融の象徴がウォール・ストリート(イギリスのシティでもいいですが)であるように、ベンチャーキャピタルの象徴がシリコンバレーにあるサンド・ヒル・ロードなのだそうです。 最も有名…

書評|Oculusの歴史「ラッキー・パーマーの章」 "The History of the Future" by Blake J. Harris

スマホの伸びが鈍化していて「スマホの次のプラットフォーム」が期待されています。「スマホの次」に期待がかかるのはAmazon Echoに代表されるボイスと、Oculusに代表されるVRですね。今回紹介する書籍"The History of the Future"はOculusの創業からFaceboo…

書評|日本ではわかりづらいRedditを理解するためのテキスト|"We Are the Nerds" by Christine Lagorio-Chafkin

Redditって有名だし、英語圏でビジネスをするならチャネルとしても無視できない。2019年1月時点でのAlexaのランキングでは18位。FacebookやTwitterのような定番以外にグロースハックをやるならRedditは検討しなければいけないチャネルの一つです。Reddit hug…

書評|自分のペースで仕事をする大切さ|"It Doesn't Have to Be Crazy at Work" by David Heinemeier Hansson and Jason Fried

いきなり個人的なことですが、ボクは最近になって日本企業で働いています。これまでずっと外資系企業に勤めたり、海外でスタートアップやったりしていたので、日本企業で働くのは本当に初めてのことです。で、これが驚くほどに快適なんですね。なぜかといえ…

書評|スタートアップとベンチャーキャピタルの関係を説明したバイブル|"Venture Deals" by Brad Feld, Jason Mendelson

スタートアップ界隈では尊敬されている人たちがいます。今回紹介する"Venture Deals"の共同著者のブラッド・フェルドはその一人です。コロラド州のボルダーはスタートアップの活動が活発ですが、そのスタートアップコミュニティーを立ち上げる主役の一人がブ…

書評|オッサンの言ってることは意外と正しいんじゃないか?|"Lab Rats" by Dan Lyons

今回紹介する著書のダン・リオンズさん。見ての通り、オッサンです。ずっと編集畑を歩んできて、リストラされる。心機一転、スタートアップ(Hubspot)の世界に飛び込んだもののやっぱりリストラ。スタートアップめ!ざけんじゃねーぞ!とスタートアップ界隈…

書籍|本当のマーケティングの話|"This is Marketing" by Seth Godin

顧客起点とよく言いますよね。本来であれば「マーケティング」というのは顧客のことを理解して、顧客が求めるものを作り、届けることです。「営業」は顧客の困りごとを理解し、その困りごとを解決する方法を紹介することです。 つまり、顧客起点とは顧客への…

Amazon Goに代表されるレジなし店舗の現状|2018年リテールテック

Amazonがレジに並ばずに自動的に支払いを完了できるAmazon Goのベータを社内にオープンしたのは2016年12月でした。そして、一般顧客を対象とした一般公開を2018年1月におこないました。2018年はレジなし店舗元年となりました。 レジなし店舗の特徴 チェック…

スタートアップの最後のフロンティア?|2018年建設関連コンストラクションテック

スタートアップでよく言われるのは地味な産業の地味な問題を解決しろです。競争相手が少ないのが一つ、本当に困っているからお金を払ってもらえるのが二つ目の理由です。以前に通っていた歯医者さんに「歯科向けのソフト開発しなよ、絶対売れるから」と言わ…

書評|Twitter創業者たちのエゴと魅力『ツイッター創業物語』|"Hatching Twitter" by Nick Bilton【2018年夏休み読書週間】

いろいろなスタートアップの成り立ちを調べてブログで書いていると、企業や人となりには(当然ながら)裏と表があると気がつきます。完璧なんてない。どれだけ素晴らしい業績を残した起業家も成人君主ではなく普通の人間です。 いわゆる会社公認の「創業史」…

書評|超えてはいけない一線を超えたスタートアップ史上最大のスキャンダル|"Bad Blood" by John Carreyrou【2018年夏休み読書週間】

スタートアップ史上最大のスキャンダルのひとつとして数えられるであろうセラノスの事件をその発端から現在に至るまで詳細に追いかけた一冊。 なぜこれほど多くの実績あるベテラン投資家や政府高官、企業役員たちがセラノスの不正を見抜けなかったのか。シリ…

なぜブロックチェーンは自由なのか|第三回:自由からも自由になったイーサリアム

今回の特集はブロックチェーンです。第一回目はブロックチェーンが生まれる背景となるサイファーパンク、第二回目はサイファーパンクとビットコインをつないだハル・フィニーの話でした。サイファーパンクもそこから生まれたビットコインもアメリカの完全自…

中国のヨドバシカメラ JD.comが日本企業から学んだこと

中国のスタートアップはすでに巨大プラットフォーマーとなったアリババ、テンセント、バイドゥのBAT(Baidu, Alibaba, Tencent)の他、それに続くユニコーンのトウティアオ、メイトゥアン、ディディチューシンのTMD(Toutiao, Meituan-Dianping, Didi) につ…

アップルから学ぶベンチャーキャピタルの役割

今回取り上げるのはアップルです。アップルは「資金を提供する人のメリットは何か」と「いつ外部から資金調達をするべきなのか」と「創業者が資金以外に必要なもの」を理解するのに最適な事例だからです。 資金を提供する人のメリットは何か そもそもベンチ…

スロースタートアップ|第四回:GoPro|ハスラーのブートストラップ

ニック・ウッドマンは他のスタートアップ創業者と少し違います。スタートアップにはハッカー(開発者)、ハスラー(ビジネス)、ヒップスター(デザイナー)の三種類の人が必要だと言われています。頭文字をとって3H (Hacker, Hustler, Hipster) 。多くのス…

スロースタートアップ|第三回:MailChimp|選んだ道じゃないけれど

スタートアップといえば急速な成長のためにベンチャーキャピタルからガツンと資金調達をするイメージがあると思います。しかし、ベンチャーキャピタルから資金調達をせずにずっとブートストラップ *1 しながら成長するスタートアップも存在します。日本だと…

スロースタートアップ|第二回:dribbble|おじさんたちのサイドプロジェクト

スタートアップといえば急速な成長のためにベンチャーキャピタルからガツンと資金調達をするイメージがあると思います。しかし、ベンチャーキャピタルから資金調達をせずにずっとブートストラップ *1 しながら成長するスタートアップも存在します。日本だと…

スロースタートアップ|第一回:Github|スポーツバーとラーメン利益

スタートアップといえば急速な成長のためにベンチャーキャピタルからガツンと資金調達をするイメージがあると思います。しかし、ベンチャーキャピタルから資金調達をせずにずっとブートストラップ *1 しながら成長するスタートアップも存在します。日本だと…

テンセント(腾讯)に学ぶ自己破壊による成長の仕方

スタートアップは創業者のビジョンをプロダクトなりサービスを具体的な形にして提供する企業だと思います。マイクロソフトのビル・ゲイツの場合は"Infomation on fingertips"ですよね。手のひらに情報を。パソコンはその手段。 しかし、企業はそのビジョンを…

バイドゥ(百度)のロビン・リー|Googleに勝った男が苦しんでいる理由

バイドゥ(百度)は中国のプラットフォーマーであるBAT(バイドゥ/アリババ/テンセント)の一角にも関わらず、アリババやテンセントほど話題に上がりません。 アリババやテンセントといったライバルに大きく後れを取っているというのが現在の評価です。ど…

中国版食べログのメイトゥアン(美团)が「O2Oのキング」となるまで

中国のプラットフォーマーであるBAT (Baidu:百度/Alibaba:阿里巴巴/Tencent:腾讯)に続く中国ユニコーンがTMD (Toutiao:头条/Meituan-Dianping:美团点评/ Didi:滴滴出行) ですね。今回は美团(以下メイトゥアン)です。 トウティアオ(头条)が中国…