カタパルトスープレックス

興味がない人は無理して読まなくていいんだぜ。

公共サービス

書評|「価値」と「生産性」の再定義|"Value of Everything" by Mariana Mazzucato

日本は生産性が低いといわれていますが、それは本当でしょうか。 生産性の計算は労力や資本といったインプットに対して、どれくらい価値を生み出したかというアウトプットから算出されます。では、そのアウトプットである「価値」ってなんでしょう?一般的に…

スタートアップ国家エストニアの脆弱性

エストニアでマネーロンダリング(資金洗浄)が行われている疑いがあるとして、世界を騒がせています。ノルウェーのダンスケ銀行のエストニア支店を通過した約26兆円に相当する資金が疑わしい取引であったということです。いま、このスキャンダルはドイツ銀…

金持ちのキャッシュレスと貧困のキャッシュレス

キャッシュレスの大きな需要は二つあります。ひとつは富裕層ためのキャッシュレスで、もうひとつは貧困層のためのキャッシュレスです。この二つの異なる需要はきちんと分けないといけないなあと思います。 富裕層とか貧困層って日本ではあまりピンと来ないか…

イギリスの取り組みから学ぶ児童相談所問題とサービスデザイン

千葉小4虐待死事件から自動相談所の問題点について多くが語られるようになりました。自動相談所の対応が杜撰だったと「質」を批判する声が上がるとともに、児童相談所の職員はそもそも足りておらず、対応が追いつかないと「量」の問題を提起する声も上がりま…

ルールは何のため?大切なものを守るため

「ルールに縛られたくない」と「歌詞」で検索するとたくさん結果が返ってきます。歌の世界ではルールは定番の悪者です。盗んだバイクで走り出したい気分なんです。それでも、社会生活においてルールに守られているのも確かなわけで、誰かが実際に盗んだバイ…

イギリス政府がはじめたボイスに優しいコンテンツ戦略

原文:"Hey GOV.UK, what are you doing about voice?" by Sam Dub and Mark Hurrell ここ数年で多くの人がAlexa、SiriやGoogleアシスタントのようなボイスアシスタントを家庭に取り入れ、スマートフォンで活用するようになりました。 最も人気のある活用方…

ブロックチェーンとエストニアの情報連携基盤『X-Road』の違い

原文:"There is no blockchain technology in the X-Road" by Petteri Kivimäki (Nordic Institute for Interoperability Solutions) 最近、X-Road(エストニアの情報連携基盤*1 )はブロックチェーンを基盤としたテクノロジーだと説明する記事を複数見かけ…

エストニアがスタートアップ国家としてデジタル政府を推進する理由

これまでアメリカとイギリスのデジタル政府に踏み出した背景を説明してきました。なかなか評判がいいようなのでエストニアの資料も作ってみました。全ての国家はそれぞれ歴史があり、大きさも様々です。アメリカ、イギリスや日本とエストニアを単純に比べる…

イギリスのGOV.UKまでの長い道のり

GOV.UKによってイギリス政府は世界で最も進んだデジタル政府という評価を受けるようになり、様々な政府のデジタル化の参考となりました。その推進力となったGDSの発足直前から現在に至るまでの過程はGDS Storysで詳しく見ることができます。カタパルトスープ…

アメリカ政府を公共サービスのデジタル化に向かわせた二つの力と三つの組織

イギリスのGDSやエストニアの電子政府の情報は割とまとまったものがあります。カタパルトスープレックスも貢献していますよね!ところが、アメリカの公共サービスのデジタル化も急速に進んでいるのですが、あまりちゃんとまとまった情報が日本語ではありませ…

アメリカ政府機関「18F」から学ぶプロダクトオーナーの役割

原文:"So, you’re a Product Owner..." by Hannah Kane 18Fで官公庁のパートナーとのプロジェクトでデジタルプロダクトを開発するときの最大のゴールは最終的に官公庁パートナーがそのデジタルプロダクトとその結果のオーナーシップを完全に持つことです。…

エストニアが仮想住民のためにぺイオニアのペイメントシステムのサポートを発表

原文:"Welcome to our digital nation, Payoneer" by Kaspar Korjus ぺイオニア(Payoneer)はペイメントのプラットフォームで、起業家がグローバルに支払いや支払いの受け取りをローカルと同じように簡単にできることを実現します。しかも、ローカルの銀行…

イギリス行政コミュニティーによるサービスの作り方

原文:"How cross-government communities can support cross-government services" by Tom Wynne-Morgan and Will Harmer ユーザーにとってサービスはシンプルです。車の運転を習ったり、ビジネスをはじめることなど。しかし、政府にとってそれらのサービス…

イギリス政府はどのようにデジタルサービスを展開したか(2014年)各省庁のプロジェクトが続々公開そしてトランジション完了

GOV.UK ざっくり言うと この年からGOV.UKの各省庁への本格展開がはじまる その展開方式はイノベーションラボ方式。主体は各省庁のデジタルチームだけど、GDSが専門家集団として事業部門である各省庁にノウハウを提供。 CTO室主導でアーキテクチャだけでなく…

イギリス政府はどのようにデジタルサービスを展開したか(2013年)先駆けとなる官公庁への展開と標準化

GOV.UK ざっくり言うと この年からGOV.UKの各省庁への本格展開がはじまる その展開方式はイノベーションラボ方式。主体は各省庁のデジタルチームだけど、GDSが専門家集団として事業部門である各省庁にノウハウを提供。 CTO室主導でアーキテクチャだけでなく…

イギリス政府の「デザイン原則」日本語版

「カタパルトスープレックスデザイン」の一環としてイギリス政府の「デザイン原則 "Design Principles"」を日本語に翻訳したので、デザイン原則について。 ボクは白洲次郎が大好きで、彼に関する本をたくさん読みました。そんな中で印象に強く残っている本が…

エストニアがICOプラットフォームとして暗号化トークン「エストコイン」の準備を開始 

エストニアはe-Resideincyが世界の起業家が信頼できるICOを実施するときのベストな選択肢であることを目指しています。そして三種類の暗号化トークン「エストコイン」を検討しています。

イギリス政府はどのようにデジタルサービスを展開したか(2012年)ベータ公開、コンテンツ移行と本番

GOV.UK ざっくり言うと データ分析大事。そのためのプラットフォームをこの時期に作る。GitHubとか使ってオープンにフィードバックを得るの大事。 GOV.UKではペルソナ使わない。あとで出てくるデジタルインクルージョンにもその思想は表れていると思います。…

アメリカ政府機関が使っているデザイン手法を集めた『18Fメソッドカード』日本語版

「大規模デザインシステムを作る:いかにしてアメリカ連邦政府のデザインシステムを作り上げたか」という記事を以前に書きました。これがカタパルトスープレックス最初の翻訳記事でした。 この取り組みは米連邦政府一般調達局の部門の一つである18Fという組…

シンガポール金融管理局がブロックチェーンを活用する「プロジェクト・ウビン」を推進

原文:"Project Ubin: Central Bank Digital Money using Distributed Ledger Technology" by Monetary Authority of Singapore 「プロジェクト・ウビン」はペイメントと証券の決済に分散台帳技術(DLT)の活用を模索する業界とのコラボレーションです。DLT…

イギリス政府はどのようにデジタルサービスを展開したか(2010/2011年)チーム立ち上げ、アルファからベータへ

ざっくり言うと 偉い人のエアカバー大事。GOV.UKの場合は当時の内閣府大臣のフランシス・モード(Francis Maude)。GDSがかなり自由にやれたのはこの人のおかげ。ここには書いていないけど、当時のイギリス政府の課題の一つは増え続けるコスト。フランシス・…

米国証券取引委員会の暗号化通貨とイニシャル・コイン・オファリング(ICO)に関する声明

米国証券取引委員会の見解のポイント ICOにおけるトークンは「通貨」ではなく「証券」 暗号化通貨/トークンが「証券」なのか使い方に依存する SECはICOに反対しているわけではなく、その将来的な価値は認めている 原文:"Statement on Cryptocurrencies and…

ブロックチェーン上の最初の住民登録がクリプトバレーで行われる

原文:"First official registration of a Zug citizen on Ethereum" 2017年11月15日にプレスが見守るなか、スイスのツーク市*1にてブロックチェーン上で最初のデジタルIDによる住民登録が行われました。ツーク市はクリプトバレーとしても知られています。 *…

書評|シェアリング経済以降の新しい地図「WTF」Tim O'Reilly

"WTF"の著者、Tim O'Reilly氏 インターネットで世の中が大きく変わり、変わり続けています。時代が変わると地図も変わります。コンピューターの時代はIBMがエコシステムの中心でした。パソコンの時代はマイクロソフトがエコシステムの中心でした。さらにオー…

アメリカ政府の視点:オープンソースのソフトウェアは実際どれだけ再利用ができるのか?

この記事は米連邦政府一般調達局、テクノロジー・トランスフォーメーション・サービス(TTS)の一部門である18Fに所属するイノベーションスペシャリストのLaura Gerhardt氏によるブログ記事"How reusable is open source software?"の翻訳です。 前回『大規…

アメリカのデジタル公共サービスの夜明け - オバマケア立ち上げ失敗、18F誕生の前日譚とCode for America

1235 Mission Streetにあるサンフランシスコのフードスタンプオフィス(通称:1235) 原文:""People, Not Data - On disdain and empathy in Civic Tech" by Jake Solomon, Jan 6, 2014 ここはサンフランシスコの大きなフードスタンプオフィスです(フード…

エストニアの仮想住民と税金の仕組みを解説

原文:"How Do e-Residents Pay Taxes" by Evelyn Liivamägi, Head of the Tax Department at the Estonian Tax and Customs Board (ETCB), October, 2017 仮想住民は課税対象ではありません 私たちが税金の仕組みで改善しようとしていること 納税義務を理解…

イギリス政府がUX改善のために行った大規模コンテンツ監査

原文:"Transforming transport content: the journey so far" by John Turnbull, Government Digital Service (GDS), October 12, 2017 この記事は英国政府の政府デジタルサービス(Government Digital Service、GDS)がコンテンツ監査やタクソノミー(分類…

エストニア政府の人工知能(AI)についての考え方

原文:"A conversation with Marten Kaevats on e-governance and Artificial Intelligence" エストニアでは人工知能(AI)に関するパブリックな公開議論がはじまっています。 その背景として昨年11月に召集されたクルマの自動運転のプロジェクトチームがあ…

世界で最も進んでいるイギリス政府のデジタル変革全容:2017年度版 "Government Transformation Strategy"

原文:Government Transformation Strategy The Government Transformation Strategy 2017 to 2020 The Government Transformation Strategy 2017 to 2020 大臣による序文 イントロダクション ビジョンと目的 ビジョン 目的 ビジネス変革 2020年までに何をす…