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スウェーデン国立銀行が法定デジタル通貨「eクローナ」に関する最初の中間報告を発表

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 ビットコインと法定通貨。分散管理された通貨と中央管理された通貨。デジタルで形のない通貨と形のある通貨。この先どうなっていくのかはユーザーニーズ次第でもあり、技術の進化次第でもあります。今は過渡期でとても面白い時期ですよね。

 スウェーデンはデジタル化/キャシュレス化が進んでいて現金を使った決済は15%まで減少しています。ヨーロッパではデビットカードの普及が進んでいるので、もともと現金社会ではないのですが、それでもこれはヨーロッパでもかなり低いといえます。

 現金じゃなければ何を使っているのかといえば、Swishというスマホの決済アプリ。ここまでデジタル化/キャッシュレス化が進むと法定通貨であるクローナの考え方も変えなければいけないという議論になります。ウルグアイロシアなど法定デジタル通貨を検討している国は他にもありますが、すでに電子マネーが現金より普及しているスウェーデンは法定デジタル通貨の実際の普及は早いのではないでしょうか。

 スウェーデン国立銀行は法定通貨クローナのデジタル化の検討をはじめ、その工程表を発表しました。第一段階がデジタル通貨の理論的な裏付けについて検証した報告書を2017年11月までにまとめて発表。そしてこれがその報告書"The E-krona project – First interim report"の翻訳です。この報告書を読むかぎり、明言は避けているもののブロックチェーンベースではなさそうですね、今のところは。

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デザインで日本を変える『デザイン+ジャパン』

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デザインは人を中心に考える問題解決方法です。デザイン思考やサービスデザインは多くの企業や公共サービスに取り入れられはじめています。人に共感し、人にとって簡単で使いやすいデザイン。

そして、デザインで日本が抱える課題を解決する試みが『デザイン+ジャパン』です。

デザインの可能性、日本のポテンシャル

毎日ニュースで問題が取り上げられています。過労死や過労自殺。学校でのイジメ。乱暴運転による死亡事故。待機児童問題や、なかなか進まない女性の社会進出。

こういう問題を解決しようとする試みはたくさんありましたし、今でも問題解決に取り組んでいるたくさんの人たちがいます。『デザイン+ジャパン』はデザインでこれらの問題を解決する試みです。Give design a chance.

なぜ『デザイン+ジャパン』なのか

このような大きな問題は企業では取り扱いにくい。クライアントがつかないから。このような問題は政府も取り扱いにくい。デザインによる問題解決がまだそこまで浸透していないから。

Code for Japanが同じような問題を開発者の立場から解決できるのであれば。デザインの立場からもできることがあるはず。

大きな問題もデザインの力で因数分解していけば解決可能な小さな課題にできるはず。

一緒にデザインで日本を変えませんか?

『デザイン+ジャパン』は一緒に問題解決に取り組んでくれるデザイナーの仲間を募集します。サービスデザイナー、UXデザイナー、UXリサーチやグラフィックデザイナーなど、様々なデザイン領域から参加してほしいと考えています。

今年12月末まで立ち上げメンバーを募集し、来年1月には最初のミートアップを開催予定です。最初のミートアップではどのように課題を洗い出し、優先順位を決めるのかを話し合います。

『デザイン+ジャパン』で一緒にデザインの力を試してみましょう。

 

デザイン+ジャパン

発起人:カタパルト式スープレックスなかむらかずや

 

書評|シェアリング経済以降の新しい地図「WTF」Tim O'Reilly

Tim O'Reilly (3)

"WTF"の著者、Tim O'Reilly氏

 インターネットで世の中が大きく変わり、変わり続けています。時代が変わると地図も変わります。コンピューターの時代はIBMがエコシステムの中心でした。パソコンの時代はマイクロソフトがエコシステムの中心でした。さらにオープンソースが地図を書き換え、GoogleやFacebookがさらにその地図を書き換えました。そして、今また地図が書き換えられようとしています。その地図はどんなものなのか。それがティム・オライリーの最新著書"WTF"の主題です。

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ドイツで開始されたブロックチェーンのIoT事例:Slock.itとShare&Charge

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原文:Share&Charge launches its mobile app, on-boards over 1,000 charging stations on the blockchain by Stephan Tual, May 1, 2017

 この記事はドイツのスタートアップSlock.itの創業者Stephan Tual氏によるブログ記事"Share&Charge launches its mobile app, on-boards over 1,000 charging stations on the blockchain"の翻訳です。ブロックチェーン、IoT、電気自動車にシェアリング経済とホットなキーワードがキラキラしているとても面白い事例です。ブロックチェーン上にIoTのハードウェアノードが乗っかるなんて超カッコいいですね!

 これまでイーサリアム(Ethereum)周辺の概要を取り上げてきましたが、こうやって具体的な実装を見るとかなりイメージがつかめますよね。

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アメリカ政府の視点:オープンソースのソフトウェアは実際どれだけ再利用ができるのか?

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原文:"How reusable is open source software?" by Laura Gerhardt, Innovation Specialist at 18F, October 23, 2017

 この記事は米連邦政府一般調達局、テクノロジー・トランスフォーメーション・サービス(TTS)の一部門である18Fに所属するイノベーションスペシャリストのLaura Gerhardt氏によるブログ記事"How reusable is open source software?"の翻訳です。

 前回『大規模デザインシステムを作る:いかにしてアメリカ連邦政府のデザインシステムを作り上げたか』はデザイン標準の話でしたが、今回はオープンソースを使った開発の取り組み方に関してです。デザインチームと開発チームが18Fという一つの部署にいるのは大きな強みですよね。

 SlackとかGithubとかバリバリ使ってるのが単純にかっこいいなあ。

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書評|モノづくり企業から顧客体験企業への転換「Connected Company」Dave Gray

 これからは顧客体験を重視したサービス企業にならないと成長できないと言われています。現代のヨハネの黙示録の四騎士と言われるAFGA(Apple、Facebook、Google、Amazon)も全てサービス企業ですね。え?誰ですか?Appleが製造業だといってる人は?Fortune Future 50というリストがあります。将来的に爆発的に成長する可能性のある企業。ここにリストアップされている企業も純粋な製造業はほとんどありません。

 例えばFortune Future 50リーダーリストで第二位のTeslaも電気自動車を作っているけど、彼らのイノベーションはそれだけじゃない。顧客体験を非常に重視しているサービス企業といってもいい。販売店を経由しないでショールームで直接体験をさせる。彼らが力を入れているクルマの自動運転もサービスに直結しますよね。

サービスデザイナーの描く新しい組織の形

 それでは「従来の効率を求めた大量生産型の組織から顧客のエクスペリエンスを重視したサービス型の組織に変わるにはどうしたらいいのか?」それが今回紹介する本"Connected Company"の主題です。この本を書いたのはXPlaneの創業者でアメリカで最も有名なサービスデザイナーの一人であるDave Gray氏。スタンフォード大学のd.schoolでも使われているEmpathy Map(共感マップ)はXPlaneがもともと作ったもので、彼の本『ゲームストーミング ―会議、チーム、プロジェクトを成功へと導く87のゲーム』でも紹介されています。

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"Connected Company"の著者、Dave Gray氏
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アメリカのデジタル公共サービスの夜明け - オバマケア立ち上げ失敗、18F誕生の前日譚とCode for America

 この記事は2013年にCode for Americaのプロジェクトに参加して実際にサンフランシスコのヘルスケアシステムの改善に参加したJake Solomon氏のブログ記事""People, Not Data - On disdain and empathy in Civic Tech"の翻訳です。

 背景には2010年に発表され2013年にローンチしたオバマケアの一部であるhealthcare.govの不具合があります。ほとんど機能せず、大きなニュースとなりました。「問題はWebサイトではありません」という言葉が胸に突き刺さるいい記事です。

 以前にアメリカの大規模デザインシステムに関する記事を翻訳しましたが、それを実施した18Fの最初のプロジェクトがhealthcare.govの改善でした。18Fの設立が発表されたのが2014年3月のことでした。この記事はその前日譚とも言えます。さらにその前日譚はティム・オライリーの最新著書の"WTF"で紹介されています。

 アメリカ政府がhealthcare.govの失敗を乗り越えて、デジタル公共サービスへ本格的に踏み切ったのはCode for AmericaのようなNPOと地方行政の取り組みも影響があったはず。日本にもCode for Japanがあるので同じことが起きるかもしれませんよ!

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原文:"People, Not Data - On disdain and empathy in Civic Tech" by Jake Solomon, Jan 6, 2014

 ここはサンフランシスコの大きなフードスタンプオフィスです(フードスタンプは低所得者に配給される金券。スーパーマーケットなどで食料品を買うことができる)。通称1235。1235 Mission Streetにあるから。私がはじめてここを訪れたのは2013年2月7日木曜日でした。コンクリート柱を通り抜け、二人の警備員が立っている金属探知機を通過。書類が散らかったテーブルの横を通り、ようやく待合室にたどり着きました。とても騒がしかった。天井のスピーカーの声がリノリウムの床に反響して響き渡る。サービスカウンターBと呼ばれる大きなカウンタートップに大勢が並んでいました。

Mangrum and Otter Building 1235 Mission Street

1235 Mission Streetにあるサンフランシスコのフードスタンプオフィス(通称:1235)

 背の高い黒人男性が列の先頭にいます。彼は前かがみになって手をカウンターにおきました。厚くて曇った防弾ガラスシートが彼とワーカー(福祉サービスのソーシャルワーカーのこと)を分け隔てていました。彼らはガラスに取り付けられたひょろ長い会議用のマイクを通じて会話をしていました。彼はワーカーとのマイク越しの会話が聞き取りづらくて困っているようでした。マイクをつかんで上に向けようとしましたが、それより近づくことができません。さらに腰を曲げて頭の位置を下げ、耳をガラスにつけました。さらに膝を地に下ろし、マイクを顔に近づけ、腕をカウンターにもたれかけました。そしてひざまずいたまま会話は終わりました。

 私がいる場所。サンフランシスコ。私たちの国で最も繁栄している都市のひとつ。そこで私が見た風景。防弾ガラス越しに会話を聞き取るためにひざまずき、連邦政府からのフードスタンプを受けようとしている男性。

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