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カタパルト式!スープレックス!!

クールなものだけメディア!(クラフトビール・スタートアップ・音楽・デザイン)

デザインによるイノベーション!日本ではどう?アクタントの武山教授に聞いてきたよ!

 日本に10年ぶりに戻ってきて驚いたことがいくつかあります。リーン・スタートアップやグロースハック、デザイン思考を知らない人が多いのもその一つです。もちろん、知ってる人も多いんです。ただ、ボク個人はそういう人にあまり出会わない。普通に会話していても相手の頭の上に「???」とハテナマークがたくさん見える。

 シンガポールなどだと政府機関の多くは「デザイン室」を設置してデザインのアプローチを行政で活かしていたり。Ministry of Manpowerのプロジェクトを皮切りにIDEOなんかも人間中心の行政作りに関してシンガポール政府に協力しています。

 オランダでもINGを筆頭に、ほぼ全ての金融機関が「イノベーションラボ」を置いてアジャイル、リーンスタートアップ、グロースハックを事業部単位で取り入れる仕組みを作ってる。これは東南アジア最大の金融機関であるシンガポールのDBS銀行でやっているDBS Asia Xでも同様です。

 そこで日本でのデザイン思考やサービスデザインなどの日本での現状を慶應義塾大学経済学部の武山教授に聞いてきました!武山教授は日本におけるサービスデザインの第一人者で、ご自身が日本ではじめてのサービスデザインの会社、アクタントを立ち上げに関わっています。

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日本企業におけるデザイン的アプローチの浸透

カタパルト式なかむら

 早速なのですが、日本におけるサービスデザインやデザイン思考の浸透具合はいかがでしょうか?

武山教授

 先進的な取り組みをしている企業は増えています。アクタントのクライアントとか(笑)ただ、それが広く裾野まで広がるのはこれからだと思います。私の場合は周りの人たちがデザインになんらかの形で携わっている人が多いのですが、受け入れ方はポジションによって違いますね。

 企業のトップの人なんかだと顧客視点で新たな価値を生み出すことには興味があるというか、意識はしているんです。世の中でもよく言われていることですし。そして「デザイン思考ってあるらしいけど、うちはどうなってる?」と現場に聞いたりする。もちろん現場のデザイン部門の人たちも意識はしている。でもなかなか実現しづらい。興味はあるけど、やっている時間がない。

 そういった意味では、興味や意識レベルは上がっているけど、実際の取り組みはまだまだこれからといったところでしょうか。今は若い人たちから裾野が広がりつつあるという感じです。

カタパルト式なかむら

 実際の事業をしている人、特に営業に関わっている人と話をすると自然とデザイン的なアプローチをとっている場合もあります。現場を観察して、仮説を立てて、検証するということをスモールバッチでスピード感持ってやっている。そもそもソリューション営業自体がかなりデザインプロセスと言える。

武山教授

 営業って日常的にフィールドリサーチをしている職種ですからね(笑)

 あと、日本の場合はPDCAを回して行く組織的な習慣があるというのもあるかもしれません。知識以前に実践している。ただ、それが意図的にデザインできているかといえばそうではない。

外に向けたデザイン、中に向けたデザイン、デザインの進む方向

カタパルト式なかむら

 企業でのサービスデザインの取り組みは大きく分けて組織の内側に向けたものと組織の外側に向けたものがあります。組織の内側に向けたものだと人事の社員満足度の取り組みなどが代表的な例です。

武山教授

 まず、組織の外側に向けたサービスデザインについて。サービスデザインの特徴はサービスを受ける側と提供する側をつなぐところにありますよね。例えばディズニーランドがサービスを提供する側で、そこへ遊びに来るゲストがサービスを受ける側。サービスを受ける側へのエクスペリエンスのデザインが注目を集めがちなのですが、サービスを提供する側のデザインはまだまだこれからです。

 次に組織の内側に向けたサービスデザインですが、まだまだこれからですが可能性が大きな分野です。サービスはサービスを提供する側も内部的にはサービス提供者とサービス受益者がいる。先ほどの例で言えば人事と社員。サービスデザインを取り入れる場合、まずは社内でやってみる。組織の内側のサービスデザインは企業は取り組んだ方がいいでしょうね。組織内の人たちの働き方をデザインすることでサービスデザインがどういうことなのか理解できることが期待できます。

カタパルト式なかむら

 サービスデザインの特徴の話が出ましたが、デザイン思考やUXデザインなど顧客体験に対するデザイン的なアプローチが色々とあります。日本に限らずなのですが、それぞれの関係があまりよく理解されていないような気がします。

武山教授

 まずデザインという言葉が人それぞれ受け取り方が違いますよね。日本人の場合はカタカナから入る。デザインも英語をカタカナにしてそのまま使っています。ただカタカナだとそれが実際にどのような意味なのか見えづらくなる。そうなるとデザインという言葉自体がバリアになってしまうんですよね。

 最近は多少は誤解があっても日本語にしていかないといけないと感じています。日本や組織の文化に合わせて説明する必要があるんでしょうね。伝える側も柔軟性を持たないといけない。

 さらにサービスとプロダクトの垣根がなくなってきたのも原因の一つですよね。サービス業だからサービスデザイン、製造業だからプロダクトデザイン、ソフトウェアだからUXデザインという区分の意味がなくなってきた。IoTはモノのインターネットと言いますが、本質は繋がることによるサービスの融合ですよね。

 サービスという言葉もデザインという言葉も曖昧になってきて、これを「サービスデザインがなかなか理解されない二重苦」と言っています(苦笑)

知識としてのデザイン、実践としてのデザイン両方が日本で普及するには

カタパルト式なかむら

 日本に帰ってきて最初の印象は「出会いの場が少ない」なんですよ。小規模でカジュアルなミートアップの場が少ない。シンガポールでもアムステルダムでもスタートアップやデザインのミートアップが毎週どこかであった。そこでいろんな人と知り合えたんですね。ところが東京ではあまりない。Connpassに大きなイベントはあるんですけどね。セミナーと懇親会を合わせた100名を超えるようなイベント。ただ、それだと実際に人と出会うのって難しい。IDEOのいうクロスポリネーションというか、人と人との出会いによる化学反応が起きづらい。

武山教授

 アクタントがやっているのはクロスポリネーションなんですよ。出会いによる相乗効果。私たち自体は少人数なので全部できない。だから自然といろんな専門性を持った人たちと仕事をするようになる。出会いによる相乗効果はデザインの原動力の一つですよね。

 ただ、業界全体を見回すと集まるのはいつも同じメンツかもしれません。UXはUXの集まり、アジャイルはアジャイルの集まりでやっている。それぞれのグループでの交流って限定的かもしれないですね。

 サービスデザインの本をいま書いていて、それが今月の7月頃に出る予定です。

カタパルト式なかむら

 武山教授の本をきっかけに日本でもサービスデザインがもっと広く普及するといいですね!本日はありがとうございました!

過去のインタビュー記事

過去のデザイン関連記事

みんながビル・ゲイツになる経営について不動産テックのスタートアップに聞いてきた!

 ビル・ゲイツに関してはいろいろな逸話がありますよね。ボクなんかは割と近い距離で働く機会があったので、「数字に細かい人」とか「怖い人」という印象があるのですが、自分自身で起業して改めて思うのは「本当に優れた経営者」だったんだってことです。

 出張ではエコノミークラスを利用したり、調布の技術センターまで京王線に乗っていったりという逸話は当時を知る古参社員から語り継がれてきました。ほかの社員だけでなく自分自身のコスト管理も厳しい経営者としての側面ですよね。会社のお金って自分のお金ですから、他人事というより自分事なわけです。そしてWindows 95で飛ぶ鳥を落とす勢いだったころ、インターネットの世界を変えることをいち早く見抜いて会社の方向性を180度変えたInternet Tidal Waveのメモ。リーンスタートアップでピボットなんていいますが、Windows 95を発売して成功している真っ只中に大胆なピボットができたのもビル・ゲイツのような創業社長ならではじゃないでしょうかね。

 でも、創業社長はいつまでもいるわけではない。会社の決断を自分事ととらえ、変化に対して恐れずに対応していくにはどうしたらいいのでしょうか?そういう研究が海外ではたくさんされていてティール・オーガニゼーションなど自律的な組織運営が注目されています。それを創業当時から実践している日本の不動産テックの雄としても注目されているダイヤモンドメディアの武井さんに話を聞いてきましたよ!

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変化に対応する組織デザインとは

カタパルト式なかむら

 はじめまして!ダイヤモンドメディアさんって、「給料はみんなで決める」とか「マネージャーがいない」とか「役員は総選挙で決める」といったキャッチ―な側面が注目されることが多いです。ただ創業2007年からやっていて、並々ならぬ信念のようなものを感じます。ここまで長い期間をかけてやり抜いている企業は海外でもなかなかありません。

ダイヤモンドメディア武井

 確かに面白くてキャッチ―な部分が注目を集めるんですが、「いい会社を作りたい」というのがその根底にあるんですよ。いい会社というのは経営者、従業員、顧客やパートナー、株主が分け隔てなくみんなハッピーになれる会社という意味です。

 それを突き詰めたら普通の会社ではやっていないことをやっていた。

カタパルト式なかむら

 精神論というか考え方として従業員がハッピーだったら顧客もハッピーになるみたいなことはよく言われます。UXを超えたCXの取り組みとかがまさにそうですよね。ただ具体的な方法となるとなかなか世には出てないです。従業員満足度を測ったり、人事制度を見直したりと多くの企業も試行錯誤している部分です。

 ダイヤモンドメディアさんがよく比べられるZapposやBufferが実践しているホラクラシーもその原型は2007年くらいで、ダイヤモンドメディアさんの創業時期とほぼ同じなんですよね。いわゆるお手本があまりない中でどのように自律型の組織にたどり着いたんですか?

ダイヤモンドメディア武井

 とにかくいろんな本を読みました。もちろん松下幸之助さんや稲盛和夫さんの本も読みました。ただ、多くの経営論は個人の修練に行きつくことが多い。企業は個人よりも長く続くので、組織のデザインが重要だと考えていました。その中でも参考になったのはブラジルのSemcoですね。1980年代から環境に適応できる組織作りをしています。

 その結果としていきつきつつあるのが自律型の組織です。組織として自己成長力と自浄力を備えられる基盤づくり。

社員と経営者の格差をなくして全員が経営者の視点とマインドを持つ

カタパルト式なかむら

 海外でもホラクラシーをはじめとした自律型の組織の議論をすることが多いです。ただ、どうしても壁となるのが給与と人事評価をどのように行うかという問題です。ホラクラシーもそこはあまり深く掘り下げていないですよね。ダイヤモンドメディアでは給与の決め方もオープンなんですよね。

ダイヤモンドメディア武井

 いまではさらに推し進めて会社のお金の使い方自体を社員で決めています。なまえも「給与会議」だったのが「お金の使い方会議」になりました。

 給料はたくさんあるコストの中の一つでしかなくって、給料だけをいくらにするかというだけでは足りないんですね。いまでは「お金の使い方会議」を通じて全員が全体の数字を見渡してどこにどのようなコストをかけなければいけないのか、総合的に判断ができるようになっていて、実際に決定に関与できる。そうすることによって他人事ではなくて自分事としてとらえられるようになります。

 自律型の組織を作る基盤は何かといえば、そのひとつは情報のオープンであること、そして誰でも見えること。この二つですね。私たちの場合はすべての数字がオープンなんですよ。どこに問題があるのか、何が調子がいいのかだれでもわかるようになっている。納会までオープンにしているので外部の人でもわかります。

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 経営者や従業員の分け隔てなく情報がオープンであれば自律的に動くようになるし、自浄作用も生まれます。これがここまでダイヤモンドメディアでやってきたことの学びですね。

カタパルト式なかむら

 ピラミッド型でもマトリックス型でもマネージャーがいる組織だとそれはやりづらいですよね。マネージャーの権力の源泉って給与を含む人事権だけじゃなくて情報自体が大きい。マネージャーが情報やデータを分析して方向性を決める。そして組織としてそれを動かす。確かに上から言われてやるのは楽なんですが、他人事になってしまいますよね。よく下からでもリーダーシップをとれるといいますが、情報がないとリーダーシップをとることも難しい。

ダイヤモンドメディア武井

 そうなんです。情報がオープンでだれでも見れることが大事です。デジタルが組織の在り方を変えました。アナログによる情報流通だったころはピラミッド型の上意下達が最適な組織の在り方でした。ところがデジタルになって情報量が増え、その伝達も早くなることでこれまでの組織では処理しきれなくなりました。それでマネージャーがボトルネックになるみたいな現象も起きてしまうようになりました。情報もその部署や役割に関係することしか伝わりませんから、どうしても部分最適になってしまう。

カタパルト式なかむら

 ボクが所属していた外資系企業だとインセンティブが給与を考える上で非常に重要でした。成果報酬ですね。日本でも成果主義を取り入れるべきという議論が多くありますが、これについてはどう思いますか?

ダイヤモンドメディア武井

 私たちの場合、話し合いで給与を決めるときに成果は考慮に入れないことにしています。成果報酬は長い目で見るとネガティブな効果しかないんですよ。お金と仕事が結びつくとお金が基準になる。私たちの場合はむしろバランスシート上の価値を上げたかどうか共有資産を高めたかというプロセスというか改善を評価するようにしています。

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カタパルト式なかむら

 実際に営業成績をバーンと一年で上げてポルシェ買ってすぐ辞めるというのは「外資系あるある」ですよね。焼き畑農業みたいにその時は成果が出るけど後に何も残らない。

 情報がオープンになって経営者と従業員の垣根がなくなれば最終的には顧客の価値や会社の価値を高めたかどうかが重要になりますものね。

ダイヤモンドメディア武井

 役員選出は会社法で役員を選ばなければいけないので決めているだけですね。選挙で役員を選ぶのもお祭り感覚です。

 将来的には株主と社員の垣根も取り払いたいと思っています。これも法律上なかなか難しいのですが、何となく糸口が見えてきたように感じます。

不動産テックと次世代経営の共通点とは

カタパルト式なかむら

 お話を聞いていると経営と事業が同じ方向を向いているというか、一本芯が通ってますよね。経営や組織運営としては情報を自由化して社員が経営者の視点で判断できるようにしている。それによって無理無駄なく、みんながハッピーになることを目指している。そして、事業としては不動産テックで、不動産に関する情報の透明性とアクセス性を高めて無駄無理をなくオーナー、不動産業者、顧客みんながハッピーになることを目指している。

ダイヤモンドメディア武井

 不動産って情報の流通コストがすごく高いんです。ひとつひとつがユニークな商品でステータスがすぐ変わる。そのために無駄な流通コストが6000億円あると試算しています。そしてそのコストをだれが負担しているかといえばオーナーや借り手なんですよ。

 もうひとつ不動産の特徴として現物資産の相対取引で相場が簡単に動くってところですね。同じ資産でも株式とはずいぶんと違うし、データ化されていない。他の資産管理のノウハウが生かせない分野だからこれまで手つかずの分野でした。

morningpitch.com

カタパルト式なかむら

 たしかに物件って一つ一つ違いますものね。ボクも最近日本に戻ってきて物件を探すときに不動産屋さんのお世話になりました。その不動産屋とは別の不動産屋が管理している物件でも取り扱うんですよね。そのときなんかすごく不思議に思いました。

ダイヤモンドメディア武井

 不動産の仲介業者ってお互いが競合でありパートナーだったりするんですよ。それゆえの情報流通の複雑さもあります。そういう不動産関連の情報流通をたかめてオーナー、仲介業者、借り手のすべてがハッピーになれることを目指しています。

 経営もまったく同じで、私たちが事業としてやっている不動産テックと会社自体の経営はまったくおなじなんですよ。

カタパルト式なかむら

 本日はいろいろお話が聞けて楽しかったです!どうもありがとうございました!

(なおカタパルト式スープレックスはお金をもらう記事広告は一切やってませーん)

その他のインタビュー記事

世界的なゲーム『ラブレター』を生み出したゲームデザイナー、カナイセイジさんの発想法

 ボードゲームやってますか!?スマホとかプレステじゃなくて、『人生ゲーム』とか『モノポリー』みたいな形のあるゲーム。こういったアナログゲームが流行っています!ボクも『サービスジオラマ』を作るときはかなりゲームメカニックを意識したんですよ!

 『チケット・トゥ・ライド』や『パンデミック』といった新しい定番ゲームがたくさん生まれている現在は『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』が出た頃のファミコンブームの頃に近いものを感じます。そして日本人デザイナーとしてアナログゲームの新しい定番『ラブレター』を世界に送り出したのがカナイセイジさんです!

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世界的なゲームを生み出した発想法

【カタパルト式なかむら】

『ラブレター』はどういう発想から生まれたんでしょうか?

【カナイセイジさん】

 今ゲームには三つの要素があると言われていまして。テーマ、メカニクス、コンポーネント。『ラブレター』の場合はコンポーネントがスタート地点でした。

『500円ゲームズ』というワンコイン(500円)で販売できるという“縛り”でゲームを作る企画があったんです。16枚のカードゲームという発想はここからなんですよ。そこで『ラブレター』の原型となる最初のゲーム『RR』を作りました。これが100個売れたんです。2010年で来場者が1000人くらいのイベントだったので、これは大ヒットといえました。その次に作ったのが『R』(再版名R-Rivals)で三作目が『ラブレター』でした。

『RR』も『R』も二人用のゲームだったので、16枚という縛りでさらに複数人でプレイできるゲームを作ろうというのが『ラブレター』のゴールでした。あと少し意識していたのが『ごいた』ですね。あれは32枚で4人用なので、ちょっとキャッチーな道具を用意できないか考えていました。

【カタパルト式なかむら】

 キャッチーさといえば、お姫さまにラブレターを送るあのテーマはどうやって思いついたんですか?

【カナイセイジさん】

 これは自分をほめてやりたいですね(笑)。最初はスパイものだったんですよ。スパイが偉い人にご注進するというゲーム。ただこれだとどうも色気がない。そこでふと「あ、お姫さまでいいんじゃないか?」って思いついたんですよ。あれは自分でもヒットでした。

【カタパルト式なかむら】

 スタートアップの世界だとプロトタイプを作って、ユーザーテストをして、と一つのプロダクトを完成形まで持っていくのに随分と時間がかかります。

【カナイセイジさん】

『ラブレター』は安産型でした(笑)。その原型となるゲームが二つあったからかもしれませんが、2、3ヶ月でできました。もちろん、ユーザーテストとかもやるんですが、評価されるゲームはアイデアの段階でもかなりいいことが多いです。

ゲームデザイナーとしての出発点

【カタパルト式なかむら】

 すでにいろんなインタビューで聞かれてると思いますが(笑)、ゲーム作りをはじめたきっかけを教えてください。

【カナイセイジさん】

 中学生の頃からテーブルトークRPGが好きで、大学でもロープレサークルに所属していました。ゲームが好きで自分でも作りたくなった。でも、テーブルトークRPGは作るのが大変。トレーディングカードゲームも考えたんですが、これも一人で作るにはヘビーすぎる。イラストもたくさん必要だし、勝ち方もたくさん考えないといけない。一人でも作れるゲームということでボードゲームに落ち着いた感じですね。

【カタパルト式なかむら】

 今でこそアナログゲームはすごい盛り上がりを見せていますが、当時はまだそれほど盛り上がっていませんでしたよね?

【カナイセイジさん】

 時期的にはプレステ2が発売されて家庭用ゲームコンソールが全盛時代。『ファイナルファンタジーⅪ』が出て家庭でもネットゲームが広まったのが2002年です。あと『ラグナロク・オンライン』とか。まだボードゲームの名作ラッシュ前で、ブームがくる兆しはなかったように思います。いまだったら発表の場はたくさんあるけど、昔はゲームマーケット自体があまり大きくなかったですし。主にコミケに出店してましたね。メディアも自分ブログくらいしかなくて。

【カタパルト式なかむら】

 アナログゲームは世界的なブームです。それが日本にも広まって来たという見方もできますが、日本ではどうして広まったんでしょうか?

【カナイセイジさん】

 いくつかの要因があると思います。人狼ブームが一つ。東日本大震災で非電源ゲームに注目が集まったのが一つ。アグリコラとかドミニオンなどの名作がゲーマー層に一気に広がったというのもあります。真偽はわかりませんが、いわゆる有名人がツイッターでボードゲームに関してツイートしたとか。そういう口コミもありましたね。

これからゲームが進む道

【カタパルト式なかむら】

 ここ数年でアナログゲームは大きく変化してきました。カナイセイジさんはこれからアナログゲームがどうやっていくと思いますか?

【カナイセイジさん】

 これは非常に難しい質問ですよね(笑)。本当にいろんなアイデアが毎年でて、出尽くしたと思っても新しいものが出てくる。アイデアを持った人はたくさんいるんですよね。

 例えば『パンデミック・レガシー』なんて本当に目からウロコでした。一回しかプレイできない。ネタバレができないから口コミも伝わりづらい。それでもあの発想力とゲームとしての完成度であれだけの大ヒットになった。

 あと大きいのが企画の作り方が変わってきている。最近だとキックスターターから始まるゲームが増えてきている。そして目がつけられるとクラウドファンディングで資金調達ができる。面白いゲームが増えて、市場も大きくなってきている。こういう環境の変化によって新しいアイデアが出やすくなっていると思います。

【カタパルト式なかむら】

 日本のアナログゲームシーンはいかがでしょう?

【カナイセイジさん】

 今は人狼や、『ラブレター』などの軽いゲーム、アニメや漫画などの別コンテンツとのコラボレーションを通して、多くの方がアナログゲームに触れる機会を得ていると思います。ゲームを遊べるカフェとかも増えてますし。そうやって興味を持ってくださった方々を、いかにもう少しプレイ時間が長くて面白いゲームのほうに誘導していくかが焦点となっているかと思います。初心者として入ってきた方に、楽しみながら中級者になっていただきたいと皆さん頑張っています。

【カタパルト式なかむら】

 以前インタビューでそのうち重いゲームも作ってみたいとおっしゃっていました。

【カナイセイジさん】

 実はもう作ったんですよ。『ウニコルヌスの騎士たち』という協力型のゲームを出しました。

【カタパルト式なかむら】

 おお!これは面白そうですね!早速買います!

【カナイセイジさん】

 実はすべて売り切れてしまったんですよ……。日本だとまだまだこういう重いゲームを重版するのって大変なんですよ。倉庫や在庫の問題とかがあるので。

【カタパルト式なかむら】

 それでも『デッド・オブ・ウィンター』みたいなヘビー級のゲームの日本語版が出るくらいだから日本でも本格的ゲームが普及する素地はできてると思うんですけどね!一ファンとして日本のパブリッシャーさんたちにはもっと頑張って欲しい!!

 海外展開とかはあるんですか?

【カナイセイジさん】

 はい、おかげさまで『ウニコルヌスの騎士たち』も海外版が出ることになりました。『ラブレター』では海外向けのパッケージングを作っていただいたんですが、今回はアートは日本版のままの予定です。こういうアニメっぽい絵にも一定の需要があるそうです。

【カタパルト式なかむら】

 それを聞いて安心しました!英語版が出たら早速買います!すごく待ち遠しいです。今日はありがとうございました!

過去のインタビュー記事

カタパルト式!Mixtape - February 2017 Edition

 今回からはその月に気になった曲をペタペタ貼っていくことにします!Spotifyに限らずSoundcloudとかYoutubeでも気になった曲を紹介していきますよ!

Kinda Bonkers by Animal Collective

 アニマル・コレクティブは去年アルバムを出したばかりなんですが、4曲収録した小作品集を早くも発表しました。ポップでストレンジな相変わらずのアニマル・コレクティブ。

P.O.W.A by M.I.A.

 M.I.A.も昨年アルバムを出したばかりですが、新しいシングルをまた発表。早えなあ。こちらも相変わらず美しくかっこいいM.I.A様です。

Chimes by Febueder

 フェビュダーと読むんでしょうか。イギリスの若いグループ。サイケデリックと何か他に足すってのが最近の傾向なんでしょうか。80年台フレーバーを感じます。なんか大きくなりそうな予感。

U Are in My System by The Cool Kids

 ザ・クール・キッズの新しいアルバムから。なかなかいいアルバムでヘビロテ気味です。この曲はThe Systemの名曲"You Are in My System"とは全く関係ないと思うんですが、懐かしくて思わずThe Systemを聴きまくってしまいました。

Love Incredible by Cashmere Cat

 ガールズグループのフィフス・ハーモニーからカミラ・カベーロ嬢がソロでカシミア・キャットの新しいシングルにフィーチャーされました。他のメンバーよりEDMっぽい音楽がお好きなようで、ぴったりだったんでしょうね。

Piel by Arca

 ビョーク、FKAツイッグス、カニエ・ウェストとの共演で注目を浴びて、その後に出した二枚のアルバムも批評家から大絶賛だったアルカの新作。この人の作品は内省的な感じが強かったけど、それがさらに進んだ感じ。まあ、聴きやすくなった。

Ballad of the Dying Man by Father John Misty

Father John Misty, 2015

 元フリート・フォクシーズのドラマーという枕詞が必要なくなるくらい人気者となったファーザー・ジョン・ミスティーことジョシュ・ティルマン。フリート・フォクシーズはちょっと大掛かりな感じだけど、この人は小ぢんまりとしたちょっとセンスのいい感じがいいんだろうなあ。ユーモアがある歌詞もよろしい。

過去のミックステープ

個人発世界へ!官製のキュレーションプロジェクト『クールジャパン』はもうやめない?

TL;DR クールジャパンって『NAVERまとめ』みたいなキュレーションサイトと同じだよね。さらにコンバージョンも悪そうだ!

Coplays Neon Genesis Evangelion Katsucon 2013

 お国柄ではなく、個性で勝負をする時代といいますか。すでに垣根は取り払われて、個人の個性で勝負ができるボーダレスの時代に突入しました。やろうと思えばいつでもKickstarterで世界中から資金調達できるし、YouTubeやSpotifySoundcloudで個人が何のコネもなく映画/音楽デビューできます。Etsyで自分が作った手作り小物も世界に売れます。いつの間にか、そうなってしまったんです。

 グローバルにならなきゃ!と随分と言われてきました。英語が話せないとダメだ!とか。その反動でグローバルなんてクソ喰らえ!みたいなことも言われはじめてますね!ただ、そんなことを議論すること自体がもう古臭くなってしまいましたよね。クールジャパンみたいな「日本推し」もおそらく戦略的にはもう古臭いんですよ。クールジャパンじゃないほうが世界で活躍しちゃってる。

  • PPAPでわかった。クールジャパンじゃなくても世界に受け入れられる。
  • 世界的なビール醸造所になるのに資金はいらない
  • 日本人から世界の人たちに伝わったラブレター
  • クールジャパンは結局のところ「まとめサイト」
  • 関連記事
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デザイン・チューズデイ!フォント!おっぱい!レプリカ!

 フォントネタが続いています。タイポグラフィー好きなんですよ。

フォントづくりの裏側

 モノタイプはフォントづくりを専門としてグーグルやマイクロソフトといった企業に提供している会社。彼らがどういったアプローチでフォントを作っているかを紹介するなかなか貴重な記事。

Monotype logo.png
By Source (WP:NFCC#4), Fair use, Link

『北斎漫画』的なおっぱい

 おっぱいや性器をモチーフにしたアートって日本とアメリカではちょっとアプローチが違っていて、アメリカはドライですよね。ジョージア・オキーフとか。同じ北斎でも『北斎漫画』と『蛸と海女』くらい違う感じ。これは最新のおっぱいを集めた記事。

『となりのサインフェルド』のお家の精巧なレプリカ

 フィギュアや模型といえば日本のお家芸ですが、アメリカも負けていません。これはジェリー・サインフェルドの出世作のテレビ番組のセットのレプリカ。『となりのサインフェルド』は日本のAmazon Primeで観ることができますね!

過去のデザイン・チューズデイ

カタパルト式よりぬきSpotify! 水曜日のカンパネラ、Toydrum、Future Islandsなど

  静かに毒のある音楽を久しぶりに聴いたなあ。さすがニック・ケイブの兄貴だ!というのが今週のハイライトでした。トイドラムのアルバムには期待大です。

[Album] Superman by 水曜日のカンパネラ

open.spotify.com

 最近は『一休さん』が頭の中でぐるぐる回ってます。前作、前々作から何か変わってるかといえば全く何も変わってないんだけど、まだまだ飽きないっすね。コムアイのラップが好きなんですよねえ。

[EP] I've Got a Future - Nick Cave and Warren Ellis Rework by Toydrum

 UNKLEからスピンオフしたグループの新作。彼らのスタジオはニック・ケイブも使っているそうで、そういう縁でこの共演になったんでしょうかね。すっごくカッコイイです!

[EP] 30000 Megatons by Pond

 このポンドはオーストラリアのバンドでテーム・インパラ関連グループだそうな。なるほど、サイケデリックですな。後半の盛り上がりがとてもよい。

[EP] Run by Future Islands

Future Islands, Kosmonaut Festival 2015 01.JPG
By Florian Koppe - Own work, CC BY-SA 4.0, Link

 前作のアルバム"Singles"が大好評だったFuture Islandsの待望の新作ってことになるのでしょう。このストレートさは好き嫌いが分かれそうだなあと。

[Album] Fresh Air by Homeshake

 ホームシェイクはモントリオールのミュージシャンのひとりプロジェクト。ジョン・マッケンタイアみたいなよい意味でのオタクっぽさがイイ。美しく爽やかだしね。

[Album] Process by Sampha

 ソウル・II・ソウルとかマッシブアタックとかシールとか「イギリスならでは!」って感じだったけど、最近はR&Bもイギリスかアメリカとか国で違いってないですよね。お国柄の違いよりも個人の特徴がより大きいといいますか。ちなみにサンファはイギリスの人です。最近のお気に入りです。

過去のカタパルト式よりぬきSpotify!